【絵付け・ポーセラーツ転写紙に向く器について】

絵付けをする器も様々ですが、素地の適性を生かすことで作品の完成にも影響を与えます。形でばかり選ばず、描きたい図案や用途に合わせて器を選ぶと良いと思います。以下に上げるものは絵付けに適する代表的なものです。

【白磁】

レリーフがあったり透かしが入ったり、様々な形があります。そのほとんどの生地はややグレーがかって、光に透かしても向こう側が見えません(透光性が無い)が、大倉などの純白のものもありますし、中にはとても薄く作られているため、光を通すものもあります。釉薬が堅いので、表面に傷はつきにくいです。レース等は割れやすいので注意して扱います。ほとんどが830度程度の焼成まで耐えます。

【ボーンチャイナ】

やや黄緑がかった色の生地です。透光性があり、透かすと薄い黄緑に見えます。中には釉薬が柔らかく、絵の具が釉薬に潜ってとてもきれいに仕上がるものもあります(もぐらないものもあります)。

釉薬が黄みがかっている為、青の発色は冴えません。素地は丈夫ですが、釉薬が柔らかいので表面が傷つきやすいのが欠点です。また、釉が柔らかいものはエナメル(盛り)や広範囲の金彩は、盛りまで潜ってしまったりクラック原因になるので、特殊技法には不向きです。

どうしても、という時は焼成温度をかなり低くします。通常色の焼成温度は釉薬の種類によりますが、釉の柔らかいものだと800度では高いようです(釉面にぽつぽつ針穴が出来てしまいます)から、よくわからない時は760度で様子を見て、大丈夫そうなら温度を上げた方が無難です。

下の写真のように、焼成したら糸底(釉薬のかかってない箇所が特になります)が黒カビ状になるのは、器が湿気を含んだ為です。1度なってしまうと戻らないので、ボーンチャイナは水洗いしたり、永いこと在庫せずにさっさと制作してしまうことをお勧めします。心配な時は、制作前に1度、何も描かずに焼いてみると良いでしょう。

 

【ニューボーン】

ボーンチャイナに似せて作られたものです。生地は純白もしくは黄色・ピンクがかったものが多いようです(ボーンチャイナのような緑味がありません)。透光性はあったり無かったりします。釉に潜るものも潜らないものもあり、判別は困難です。白磁より強度はありますが、釉薬の柔らかいものは表面に傷が付きやすいです。焼成温度は810度程度が限度のようです。

左がボーンチャイナ。右がニューボーンを同時に光にかざしたものです(中央はお互い重なって影になってます)。ボーンチャイナは緑がかった色になります。最近はなかなか判断が難しい器も増えています。  
【陶器】

代表的なものはタイル、アクセサリーです。多孔質なので見た目よりも軽く、釉薬も柔らかく傷つきやすいです。素地に薄茶の色があり、たたくと濁った音がします(磁器は澄んだ音がします)。色の発色、ラインの切れは白磁・ボーンチャイナ等に比べ劣ります。焼成温度は780度くらいが限度です。

【ビスク】

白磁ですが、釉薬をつけずに焼きしめたものです。陶板の裏みたいな感じで、日本では白い状態で見たことがありません。素焼きでは無いので意外と丈夫です。左のように黄・ピンクなどの色が素地につけられていることもあります。釉薬が無いので、失敗すると描き直しがききません。

絵の具を乗せると、よほど厚く塗らない限りマットカラーになります。また。下の写真はエナメルワーク後ブライト金を乗せていますが、素地がマットなので光りすぎず、マット金のように見えます。焼成温度は800-820度程度です。


おまけの話・「市販食器は焼けるか」

結論から言うと、白磁はそのほとんどは大丈夫です。左画像のように、金ラインや縁に色有りでもオッケーでした(中の絵は私が描きましたが、縁のグレーと金は元々です)。ただし、金ラインは良い金で無いと焼成回数が増えるに従ってちょろい色になってきます。また、ウェッジウッドのボーンチャイナの一部では、よほどの低温でないと釉薬が沸騰したようになってしまうものもありました。陶器では、発色不足は勿論のこと、やはり釉がぽつぽつなるものもあり、そこまでして焼くか?!と思います。

2002/7/25 金井景子制作 2013/3/4加筆修正

当ページの内容・画像の無断掲載・複写を禁じます。

http://overglaze.net/