【箔・金粉・金下マット・マット・雲母】

作品を豪華にする特殊テクスチャーです。以下の作業を入れることで作品に重厚感を増すことが出来ますが、器への定着が弱かったり、毒性の強い画材もありますから、実用食器には避けた方が無難でしょう。

左から銀箔、青金箔、金箔。薄口・厚口と厚さも各種存在します(金箔は更に含有率によって×号金と名称があったり、大きさ・加工の手間に応じた名称が存在)。

銀・青金箔は空気に触れることで黒ずんでくるので、絵付にはあまり適しません。

金箔の購入で注意が必要なのは、それがホンモノの金なのかの見極めです。中には銀箔や真鍮箔に着色しただけのものもあり、焼成すると真っ黒になってしまう品もあります。

やけに安いものや、画材店で「洋箔」「玉虫箔」という名称のもの、トールペイントなど焼成に関係ないコーナーで販売されている品はやめておいた方がいいでしょう。どちらか判別がつかないときは、テストプレートに焼成実験をお勧めします。

 

金箔は大変薄いので、取り扱いにも注意が必要です。油気に弱く、すぐ余計な箇所にくっついてしまうので、じかに手で扱わないのは勿論、作業時には無風を心がけます。使用法は様々ですが、以下に私の使い方一例をあげますので参考にしてください。

 

1.金箔を散らしたい箇所に薄く不乾性オイルを塗る。

2.金箔を箔箸(竹で出来たピンセットのようなもの。ピンセットでは金属同士の為、金箔がくっついてしまうので使用不可)でつまむ。とりあえずどんどん置いてみる。細かく散らす時には「砂子用箔筒」を使用して細かくまく(注・日本画専用画材店で扱っている竹筒。金属製の網は金属についてしまうので不可です)。

3.金箔の浮いた箇所は焼き飛んでしまうので、乾いたキッチンペーパーで強く押さえる。740-760度で焼成。

 

エナメルで定着させる方法もありますが、金箔らしいぎらっとしたテクスチャーが失われます(代わりにはがれにくくはなります)。

画像左は転写シール化されて扱い易いものです。台紙がついているので、慎重にはさみで切り抜くことが出来ます(扱いは転写シールに準じます)。

右は金箔を薄い紙(あかし紙)に仮定着させて扱い易くしたものです。これはもたもた作業すると紙ごと器にくっついてしまうので、形をくり抜くなどの加工は適しません。

器に大きな面積で金箔を貼りたい時使用するのが良さそうです。

 

*あかし紙を購入して自分であかすことも可能ですが、それほど大量に金箔を使用するニーズも無さそうなので使い方は割愛します。

下画像は細かく切った金箔を使用しています。四角が「切箔」。サイズも5厘〜3分角とあります。細いのは野毛。これも細さが各種あります。

【変わったもの】左のスプレーは、ケーキなど食品装飾用の金箔スプレーです。大きさは色々あります。成分が純金なので、試しに750度で焼成したところ、ほぼ飛びもなくきれいに定着しました。20センチくらい離してスプレー後、浮いた金箔があるようならば軽く乾いたティッシュで押さえました。
画像はほぼ実寸大です。大変細かい金が噴霧されます。あまり近づいてスプレーすると、右端のように風圧でよれてしまいます。

金粉

パウダー状の金です。銀、青金もありますが、空気にさらしていると黒ずむので必ず密閉して保管します。左のような油紙に入っています。

絵の具のようにオイルで溶いて、パディングしたり、筆で塗ったります。金液と異なり薄く塗った箇所もきれいに出るので、グラデーションが作れます(下の作品では背景の雲でぼかしています)。

大変粒子が細かいので、無風環境での作業を心がけます。また、筆についた金粉はブラシクリーナー内で拡散するので、別の小皿にクリーナー液を分けて、金粉が出なくなるまでよく洗います。焼成温度は740-760度程度です。


金下マット

金液を塗る前にこれを塗布・焼成することで、ブライト金液をマット化する物です。通常左のような肉色、もしくはくすんだピンクの粉です。

普段使いのオイルで薄くパディングして焼成(低温という説が有力ですが、たびねこは830度で焼成してもなんともありませんでした。マット化するのは原材料の問題ですから、温度は関係無いと思うのですが・・・)、次にブライト金液をかけるのですが、中央の画像にもあるように、ベースの金下マットを厚塗りすると逆に光ってしまうので注意しましょう。画像では下が金下マットのみ、上がブライト金塗布後です。左に行くほど厚塗りしてあります。

 

このアイテムはオンゴールド技法作品を安上がりに(!)済ませたい時などに重宝です。また、下画像のように金下マットを塗る段階でゴムピック等でテクスチャーをつくっておくと、ただブライト金液を塗ったとは思えない複雑な文様を作れます。ピックで抜いた箇所がブライト金、普通に金下マットがある箇所がマット金、少し厚めに金下マットがある箇所はやや盛り上げたようなブライト金になります(注・画像左上が金液塗布後です。あまり盛り上げすぎると生焼けになり、とてもキチャなくなります)。


マット・雲母

【マット】元々フラッキス成分等を抜かしてあるので、塗るとマットな仕上がりになる絵の具です。色つきもしくは白い粉で販売されています。

白い粉マットは、20-30パーセント程度を上絵の具を混ぜることで、マットカラーを作れます(マット粉が50パーセントを超えると定着しないようです)。焼成温度は760-740度程度。左画像のようにグラデーションが作れますが、べたっと塗る方がマット感が出て良いと思います。

専用の溶剤が販売されることもありますが、遅乾性オイルで普通に練ってパディングで大丈夫でした(ドライグラウンディングは慣れていないとかえってムラが出ます)。完成後は表面の傷やほこりに弱いので、気を付けて扱います。

 

【雲母/メタルカラー】パフパフとしたテクスチャーが出来ます。色は各色ありますが、色によっては雲母ホワイトカラーに上絵の具を10パーセント程混ぜることでパステルカラーも出来ます。比重が軽く、通常毒性が大変強い絵の具なので、無風環境で使用します。溶剤は普段使いのオイル、焼成は760度前後です。薄く塗ると定着が弱いので、しっかりとべた塗りします。

筆についた雲母はブラシクリーナー内で拡散するので、別の小皿にクリーナー液を分けて、色が出なくなるまでよく洗います。完成後は表面の傷やほこりに弱いので、気を付けて扱います。

最近金液が高価なので、メタルカラーの金色についてよくご質問を受けますが、どう見ても金液とは異なるもので、代用は難しいように思います。

2002/10/20 金井景子制作(2003/9/27金スプレー情報追加、2013/3/4加筆修正)

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