【筆のあれこれ】

絵付で使用される筆も色々ありますが、その特徴を捉えて使い分けると作業がぐっと楽になります。大まかに分類すると、丸筆・平筆・その他特殊な形状の筆に分かれます。

更に各筆とも筆の形、毛質で細分されます。ざっと分類した表が以下です。筆のサイズは、号数の数値に比例して大きくなります。また、メーカーによって同じ号数の筆でも大きさが若干異なります。

筆の形状 穂の長さ 毛質 用途・特徴
丸筆 長い A/堅い(コリンスキー) 通常は描画筆。細いものはライナー筆。
B/柔らかい(羽管・猫毛等)
短い C/堅い(コリンスキー) 主にヨーロピアンで使用。
D/柔らかい(羽管)
平筆 長い E/堅い 描画筆。
F/柔らかい ぼかし筆・描画筆。
短い G/堅い 描画・抜きの表現に使用。
柔らかい (上記筆との判別が困難)
その他 各種 H/各種 デイヤーフット・ファンブラシ・長刀筆・ヘアーブラシ等

 

上記の各項目に対応する筆を、具体的に上げていきましょう。


丸筆
左3本はカザンリスの毛質がやわらかい筆。左からD,B,B。毛色の黒いのが特徴。右端は猫毛でBに該当。残りの中央3本はコリンスキー毛で、こしがある。毛色が茶色いのが特徴。左から、C,A,Aに該当。
号数は6/0号〜3号くらいまでがメインです。カザンリス等毛のやわらかい筆は、先をつぶして平筆のように濃淡を付けやすいです。画面への当たりが弱いので、乾いていない画面に絵の具を上乗せしたり、細かなぼかしが可能です。コリンスキー毛に代表されるこしのある筆は筆のもどりが良く、カーブストロークでも最後に毛先が揃うので、ストロークを生かした絵に適します。また、描いた色を抜く作業にも最適です。右端の筆のように、筆の止め部分が3段になっている筆は、最上段がすぽっと抜けて無くなってしまうこともあるので、保管に注意します。

平筆
左からG短くて堅い、E長くて堅い、F長くて柔らかい筆。同じメーカーの同じ号数でも、販売時期により若干の長さの違いが見受けられる。堅さの判別方法として、筆の根本をしならせてみて、手を離しても毛先が曲がったままの筆はやわらかい筆。
号数は2〜18号程度がメインです。穂が短い筆はコントロールし易く、画面への当たりが強いので抜きの作業に適します。穂が長い(縦横の比率が縦の方が長い筆)が一般的ですが、毛質の柔らかい筆は当たりがソフトなので、画面の絵の具が乾かない上から色を足したり、刷毛目をぼかすのに適します。画像右端の筆は断面は丸筆状で、毛先を四角くつぶしながら使用します。毛の分量が多いので絵具の含みが良く、広い面を塗ってぼかすのに適します。

その他

使用用途の限定された筆です。必要に応じて購入すると良いでしょう。左から紹介します。

 

*カザンリスオーバル筆*平筆の角がとれた、舌のような形の筆です。動物の毛などに使用出来ますが、毛が柔らかく長いのでコントロールが難しい筆です。

 

*ライナー筆*長刀筆とも呼ばれます。穂先長くが鋭角三角形で、腰のない毛質です。金彩のろくろ線やアメリカンスタイルの植物のつるに使用出来ますが、大変コントロールが困難な筆です。

 

*カザンリス大丸筆*毛先をつぶすと、一番左のオーバル筆のようにして使用出来ます。含みが良く、たびねこは動物の毛などに重宝しています。

 

*ヘアーブラシ*とても堅い毛です。常に乾いた状態で使用し、地塗りの済んだ髪の毛をこの筆でスクラッチすると、筆あとのひっかき傷が髪のように見えます。ブタ毛、ナイロン筆でも代用出来るようです。

 

*デイヤーフット*馬の蹄のように、毛先がすぱっと平らです。常に乾いた状態で使用する筆です。桃・葡萄などの果物のぼかしに使用します(地塗りをした上から、この筆でぽんぽんたたくのです)。筆洗液・オイルがつくと毛がお互いにくっついてしまうので、しまうときは中性洗剤で水洗いして陰干しします。

 

*ダスティング*ドライグラウンディング(オイル面に絵具粉をふりかけてパディングすること)時に、余分な絵の具をはらうものです。化粧刷毛でも代用出来るようです。

 

*ライナー筆*筆中央の毛先が長く飛び出している筆です。根本に絵具をたくさん含ませられるので、細い線が長く引けます。マイセンでは裏の剣マークをこの筆で入れていました。水溶性絵具でないと、絵具のおりが悪いようです。

 

*アングル筆*留め金が途中で曲がっているので、カップの持ち手などの入り組んだ箇所に彩色しやすいのですが、感覚を掴むのにコツが入ります(私は苦手です・・・)。

 

*ファンシェープブラシ*扇型をしており、乾いた状態で使用します。ぼかしに良いのですが、筆幅があるので不要な箇所までぼかしが入ってしまいます。オイルや筆洗液につけると毛同士がくっついてしまうので、しまう時は中性洗剤で水洗いして陰干しします。毛が柔らかいと使いにくいです。


おまけの話・「筆の寿命」

使い慣れた筆はついそればかり使いがちですが、筆先は摩耗するものです。消耗品として買い換える必要が出てきますが、金井景子は以下のようになったら中性洗剤で綺麗に洗って陰干しし、金やラスター・マスキング用に再利用しています。

*丸筆は明らかに細くなったら(2号なのに0号くらいみたいになる)潮時です。

*平筆は、筆をしならせて曲げた時に、筆の外側が切れて短い毛だらけになったらです。

2002/7/9 金井景子制作

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