【金盛り・金下盛り(エナメルワーク)】
器に盛り上げ効果を付ける技法で、盛り上げた上に焼成後金(若しくは銀)をつける金盛りと、盛り溶剤に絵の具を少量混ぜて色のついた盛り(色盛り)をする方法があります。焼成温度が低いことが多い為、通常絵が完成してからの装飾となります。左写真のような盛りの他にも様々なテクスチャーの盛りがあり、粉によって使用方法は若干異なります。
盛りに使用する材料は、粉を溶くタイプと練られているタイプにおおまかに分かれます。白もしくは黄色い色をしている事が多いです。 溶剤はどろりとして重く、乾燥の早いメディウムで練ることが多いです。これにより、盛りを高くする事が出来ます。ターペンタインやエナメルシンナーを使用して粘度を調節します。
練られているタイプは未使用でも劣化が早いので、早めに使い切るように心がけます。
【盛りのコツ】盛りの粘度が巧くいっていることが肝心です。固すぎるとのびが悪く、ドットの盛りだと角が立ちます。緩すぎると乾燥する間にだれて広がってしまいます。盛りの溶剤は速乾性であることが多いので、私は10-15分おきに粘度のコンディションをチェックしています。
ほこりや気泡が入ることにより、焼成後形がいびつになったり噴火口のようになります。生乾きの盛りの上から再度盛ったり形を修正すると、気泡などが入って焼成後ボコボコになったりします。基本的には1度のストロークで決める方が巧くいきます。作業中に気泡が浮上してきたら、竹串の先などで除去します。
焼成は完全に盛りの内部まで乾燥してから行います。もしもっと高く盛りたかったり複雑な形に盛りたい時は、一旦焼成を入れてから再度行った方がリスクが低いです。
【盛り動画レクチャー】(12MB/約2分30秒) このムービーの再生にはQuickTimeを使用しています。表示されない方はプラグインをダウンロードして下さい(フリーウェア)。
【トラブル例】 1・未焼成では巧く見えたのに、焼成したら随分低くなってしまった。
→どの盛りでも焼成によって多少縮ます。その分を計算して高めに盛りましょう。焼成温度が高すぎてもなるようです。また、ボーンチャイナなど釉薬の柔らかい器に盛ると当然沈みますので、高さのある盛り装飾をしたい時は白磁を使用します。
2・盛りの表面がぼこぼこしたり、クレーターのような陥没がある
→生乾きの時に何度もいじったり、空気やほこりが入ったりすることでなるようです。盛りの粉(若しくは練った状態のもの)の劣化や湿度を含んだことによっても起こります。残念ですがほとんど修正は出来ません。
3・器から剥がれてしまった
→盛りの粉の中には、あまり高く盛れないものもあります。特に「透明に盛れる」と書いてあるものはガラス分が多いようで剥がれやすいです。焼成後、まだ器が熱いのに急に冷却した場合も剥がれやすくなります。これも修正は出来ません。
4・盛りは巧くいったのに、上から金を塗ったらヒビのような亀裂が入った
→盛りと金の収縮率の違いで起こるようです。盛りを焼いた時よりも焼成温度を下げることで回避出来ます。また、盛り内部の乾燥不足によっても起こるようです。
5・色盛りの粉の混合比率はどのくらい?
→種類によって異なりますが、3割前後です。5割を越えると剥がれる率が高くなります。右画像のパディングとの境界にあるのが色盛りです。赤系など色によっては変色する可能性がありますので、私は前もって皿の裏などにテスト焼成をしています。
右画像の水色のドットが色盛りです(金井景子作品)
おまけの話・「盛り入門」
盛りを入れると作品がゴージャスになりますが、どうも失敗するのが恐くて・・・。という方にお勧めなのが、ドット盛り+金彩です。ドットはよほどの事が無いと失敗しませんので、優美な雰囲気は細い金ラインで処理するとリスクが低くて済みます。下記の写真は金井景子作品のゴールドワークです。
2004/2/17 金井景子制作 2013年3月加筆修正
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